鈴林です。凪のお暇4巻のネタバレと感想です。

ドラマ化がきっかけで読み始めたけど、一度読むと次が気になる…! 3巻ではまさか凪がメンヘラになってしまうなんて思わなかった。

恋は人を変えるとは言うけども、悪い方に変わりすぎじゃん…。慎二がゴンさんに落ちないところは「ですよね」って感じがするけど、これはもうどうやって決着するのかわからない。

しかしゴンさん役が中村倫也ってところがもう期待しかないんですわ!!w

凪のお暇 ネタバレ 4巻

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凪のお暇 4巻 ネタバレ

十九円め 19話 凪、気づく

「マジでスベってんなよ…っ」

 

慎二は雨の中、頭を抱えて行った。

 

そう言った慎二の声は少しかすれていて、頬をつたうのは雨では無くて涙のように見えた。

 

「え? なんで?

もしかして…泣いてる…?」

 

「なんで泣くんだよドブス。よく見ろ雨だ。

むしろスベリ倒しているお前に笑えるくらいだわ」

 

慎二は顔を上げて見下すように行った。

凪は後悔しながら「笑ってくれて光栄だよ。じゃあ私はこれで」と言って去ろうとしたが、すぐに呼び止められる。

 

「最後にひとつ確認させろ。

お前本当にあんな奴でいいんだな?」

 

「で、じゃないよ。

が、いいんだよ。

だってゴンさんといると空気がおいしいの。いつも楽しませてくれて、思いもよらないところに連れ出してくれて

知らない世界を教えてくれて優しく輪の中に入れてくれて」

 

「じゃあお前その空気のうまみのために空気読んでやっていくんだ?

自分の時間は放っておいて空気読んで、見たくないものにはフタして」

 

慎二の言葉で、それまで背を向けていた凪が慎二に振り返った。

 

「私、空気読んでない!」

 

それから二人の言い合いが始まった。道の真ん中で雨の中で傘も差さずに言い合いをする男女を見て、通り過ぎる人は皆珍しそうに見ていく。

人ごみの中に、うららちゃん親子もいた。

 

「もう私空気読んでない!! 今はもう自由にやってるよ! ゆめかわのゆるふわライフだよ!」

「あ!? 読みまくってっからそんなザマになってんじゃねぇか。そのゾンビみたいなツラが証拠だろうが!

イキったところで結局お前は自分をごまかして生きてくんだよ!

だから俺言っただろ!? お前は絶対変われないんだよ!」

 

慎二の言葉でまた凪が過呼吸になろうとしたとき、うららちゃんが雨の中駆け出す。

慎二にドッと体当たりして、

 

「凪ちゃんをいじめないで」

 

と猫の威嚇のように睨みつけた。

 

「う、うお、あ、はい」

うららちゃんの行動に慎二も返事をするしかなかった。

 

うららちゃん親子と一緒にアパートまで帰るが、うららちゃんは凪から離れようとしない。

うららちゃんのお母さんの好意で、凪はうららちゃんの家でお風呂をもらうことになった。

 

あれよあれよという間にお風呂をいただいてしまった凪。

乳白色のエメラルドグリーンのお湯に、ハッカの良い匂いがするお湯で冷えた身体はすぐに温まった。

 

『あれ、私…

こんな風にゆっくりお風呂に浸かったのいつぶり?』

 

お風呂から出て、タオルを借りる。着替えは隣の自室に取りに戻った。

凪がお風呂から出ると、うららちゃんは何か話したそうだったが先ほど珍しく気を張ったせいか疲れて眠ってしまっている。

うららちゃんのお母さんも、あんなに興奮状態のうららちゃんを初めて見たらしい。

寝ぼけながらもずっと

「凪ちゃんは私が守る」

と繰り返していたらしい。

 

うららちゃんを撫でて、温かさを感じていると…ふと考えがよぎった。

 

『あれ、私、

こんな風にうららちゃんの顔見たのいつぶり?』

 

するとうららちゃんのお母さんは、「良かったら食べていってください」と言って土鍋丸ごと茶わん蒸しを振舞ってくれた。

前に凪がうららちゃん達親子にごちそうした土鍋プリンの応用として作ったらしい。

 

「お風呂だけでなくご飯まですみません!」

「いえいえウチのうららがいつもすみません!」

 

と2人で頭を下げた後に、食べ始める。

お出汁たっぷりのたまごがふるっふるでとてもおいしかったが、また考えがよぎる。

 

『私、どのくらい台所に立ってないんだっけ?

そっか、ゴンさんと会えない時間は丸くなってるだけだったから

目を閉じて耳を塞いで、毒虫みたく丸まってたんだ』

 

ぼーっとしているとうららちゃんのお母さんに心配されてしまった。

さっきまで道路で言い合いをしていた慎二について説明する。

 

「頭に血が昇ったのは、図星を突かれたからなんだと気づいてしまって…」

「凪さん…私で良ければお話聞きます。なんならお酒の力も借りてもいいですし」

 

うららちゃんのお母さんは、おろおろしつつも5リットルの大六郎(大五郎的なお酒w)を取り出した。

結局お茶を飲みながら、事情を説明する。

 

「…そうだったんですね。103号室の安良城(あらしろ)さんとそんな関係に…

バイクの二人乗りを見た時はもしかしてとは思ってましたが」

 

フフ、と笑いながら話してくれるうららちゃんのお母さん。

凪が「私が勝手に彼を想ってぐるぐるしちゃってるだけで」と恥ずかしがると、うららちゃんのお母さんはお茶を一旦置いてから

 

「バイクで海に連れて行かれたら恋に落ちるのは仕方ないです。

というか、亡くなった主人に私が恋に落ちたキッカケもそれです!」

 

と照れながら馴れ初めを話してくれた。うららちゃんのお母さんはまじめ一徹! という感じだったが、旦那さんのバイクの後ろに乗ったことがきっかけで彼のことが王子様のように見えたらしい。

それまではしっかりと決められた線路の上を走ってきていたので、規格外の場所に連れ出してくれる彼といると世界が広がっていくようでうれしかった…と話す。

 

「さっきの元カレさんはそういう方じゃなかったんですか?」

と聞くと、凪の顔がとたんに暗くなった。

 

慎二は車に乗っていたし、運転中イライラするタイプだった。

海に行こうとすると、途中で「もーーーめんどいからホテル寄って帰ろうぜ!」と言い出してしまう…。

凪は車という閉鎖空間で息が詰まるようだった。

 

その点バイクは解放感がある。

うららちゃんのお母さんは、旦那さんの後ろに乗った翌日にすぐバイクの免許を取りに行った、と話す。

「自分も運転できれば彼と連れ立ってどこまでも一緒に行けるんだなって思って」

とウキウキと話す。そして凪にも「バイクの免許取ったら教えてくださいね!」と声をかけてくれた。

 

その後雨が止んだこともあり、凪は自分の部屋に戻る。

 

うららちゃんのお母さんがバイクの免許を取りに行った、と聞いて凪は茫然としてしまった。

これまで凪は「自分の運転でどこかに行く」なんて、一度も考えたことが無かった。

 

1階のうららちゃんの部屋から、2階の自室に戻ると…ドタドタ…ドン! というすごい音がしてドアが開き

「ゴンゴン!?」

と言って、ゴンさんの部屋から女性が飛び出してきた。

 

「やだ、すみません間違えました。この前ゴンゴンといたお隣さんだ」

と言ってゴンさんの居場所を聞かれる。しかし凪も知らなかった。

 

「約束してたのに。ホント自由人だから…でもとにかく少しでも顔が見たくて」

そう話す彼女の首には、ゴンさんの家の鍵がかかっていた。

 

 

『うわぁ…すごい疲れた顔してた。ゾンビみたいな。

でも、たぶん今の私…彼女と同じ顔してる。』

 

慎二と交わした言葉がもう一度凪を襲う。

 

『ゴンさんといると空気がおいしい。

でも私、ゴンさんといることができない時…息、してないみたいだった』

 

深夜営業のディスカウントストアに言って、自転車を購入する。防犯登録は速攻で済ましてもらった。

 

『無職の身でこんな散財は無謀すぎ? でもゴンさんのイベントに3回行くより安い。

とにかく私は、今すぐに自分の運転で海に行かなくちゃいけない気がする!』

 

凪は自転車を漕ぎ出した。

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二十円め 20話 凪、走る

真夜中に自転車を漕ぎだし、たどり着いたのはあの日のきれいな海。

そして凪はあの日ゴンさんがくれた鍵を海へと投げた。

 

『さよなら私の恋心。私は私のお暇を取り戻せたんだ…!』

 

 

 

 

と、夢のような展開になるはずも無く。

凪は自転車で走り出してものの数十分で迷子になっていた。ガラホでルート検索するが何度も「ルート再検索」されて全くナビされない。

 

携帯を見ながら自転車に乗っていると車にぶつかりそうになり、運転手に怒鳴られる。寒くて手もかじかんできた。

道を間違ったかと振り返っていると、はずみで壁にぶつかりそのまま転倒…。

膝をだいぶグロい感じにケガをしてしまった。赤い肉がむき出しになり、履いていたデニムもリアルダメージジーンズに様変わりしていた。

 

ひとまずコンビニに行って傷口を消毒しようと、再度ルート検索を試すが携帯は充電切れになってしまう。

知らない夜の街をケガをしながら自転車で走っているだけ、だが世界に一人ぼっちで居るようだった。

 

痛い、暗い、怖い。

そんな思いで明かりを探そうと歩いていると、スナックが見えた。

分厚くて板チョコのようなドア。外から中の様子がわからないスナック。

 

『いや! でも思い出して! 無職生活を始めて間もなかった頃、外から見ただけじゃわからない世界があったじゃない!』

 

自分を鼓舞して、深呼吸して中に入る。

 

「おつかれサマー!」

「いらっしゃーい!」

 

外国の方であろう2人の女の子たちに熱く出迎えられる。

お客さんだと思われてしまったので、凪は正直に「自転車なのでお酒も飲めず、この辺で迷子になってしまって道をお訪ねしたくて」と話した。

 

するとママであろう女性が「冷やかしなら帰んな!」とギンッと睨んだ。

あまりの怖さに『毎回そうは上手くいかないよね…』と帰ろうとすると、凪がケガをしていることに女の子が気づいた。

ママに伝えると、外国人の女の子たちはママの許可を取って凪を手当てして携帯まで充電させてくれた。

ママはブツブツ言いながらも手当も充電も許してくれた。

 

凪は酒は飲めないが「一番安いソフトドリンクを下さい」と注文する。

ママは金にならない客、ということで節電モードになってしまった。

 

凪が立川の方から来たと聞いた女の子たちは、家までのルートを調べようとしてくれる。

しかし凪は家に戻りたくは無かった。

 

『このケガだし夜道はやっぱり怖い。いったん戻って朝になったら仕切り直して…。

いやダメ。今戻ったらゴンさんのキラキラにたやすくやられる自分が見える。そして毒虫に…!!!』

 

家に戻りたくはない、そしてどうしても行かなければならないところがある…!

と女の子たちに伝えると「治療費の代わりに話してよ」とせがまれてしまった。

 

「じゃあ要するに、無理めの男との情欲に溺れてココロがころっと乱れてしまったと」

「そんな自分と決別するために海に向かってるわけね。かつてその男と行った海へと。

めっちゃ青春ヤローじゃん!」

 

女の子たちに言いたい放題言われてしまう。

ママはその話を聞いて「青い鳥探しってとこね!」と言った。

 

幸せの青い鳥を探して旅に出た兄妹だが、結局青い鳥は自分の家に居たと気づくお話。

 

中国出身であろう女の子は、万里の長城に上った時は達成感と絶景に悟りが開けた気がした…が、下山してすぐにアスファルトは最高だと感じたらしい。

もう1人の子は、コルディリェーラに言って「全ての煩悩から開放された!」と言った元カレはその足で風俗街に消えたと言う…。

2人とも日本に来てみて、たまに国に帰りたくなるらしい。今の生活も楽しいが、やはり家が一番だと感じるのだとか。

 

「それって…どこか遠くに行ったことがある人だからこそ言えることだと思うんです。

青い鳥をちゃんと探したことのある人が言うから重みがあるっていうか…」

 

と凪は話し出した。

凪は、青い鳥の結末だけをかいつまんで全てわかった気になるようなところがあった。

SNSで誰かがどこかステキなキレイなところに行った写真が流れる度に

 

「で? 私は知ってるよ? そんな遠くに行ったとこであなたが何も変われないこと知ってるよ。

だって青い鳥は家の中にいるんだから意味なくない?」

 

と家の中でいいねを押しながら思っていたらしい。

しかし凪は今夜近所を自転車で走るくらいでこんなに怖くて大変なことを経験して、新たな考えが生まれていた。

 

「近所を自転車で走るくらいでこんなに怖くて大変なのにあんなに遠くに行けちゃう人達って本当にすごかったんだなって…。

しかも私、28歳で今無職なんですけど

今までの人生で一度も自分の意志でどこかに行きたいって思ったことがないんです」

 

と告白した。

 

どこかに行きたいと思ったことがないのに、誰かに乗っかってどこか遠くに連れてって欲しいと思っていた自分。

その浅ましさに一度気が付いたのに、恋のキラキラに溺れてまた誰かに乗っかっていたことに気づいた。

そんな自分を隠蔽しようとした…ことに凪は気づいて、とても恥ずかしかった。

 

「だから私は自分の意志で自分の足で海に行かなくちゃいけないんです。

今すぐに!」

 

凪は顔を隠しながら言った。

ママは凪の言葉を聞いて「独りよがりのトレンディドラマかい!?」と言ったが、続けてこう話してくれた。

 

「青い鳥を探し続けてきたあたしがたどり着いた答え。

世界の真理、それは幸せの鳥は探すもんじゃない! 食うもんなんだってことさ!」

 

ママはトリテリ丼を出してくれた。凪の分もある。女の子達のまかないのついでらしい。

 

「ここからあんたの目的地の海は意外と遠いよ。

それに私は独りよがりのトレンディドラマは嫌いじゃないよ。ほとばしる熱いパッションがあるからね。

初めて自分の意志でどこかに行きたいと思ったんなら、とことん走りな! 28歳無職」

 

ママはを応援しつつ、凪にもまかないを出してくれた。

食べた鳥丼はとてもおいしかった。

 

携帯の充電も溜まり、手袋と紙の地図を凪はスナックを旅立った。

 

『おなかがポカポカする。青い鳥のパワーかな。

うっすら夜明け…。

ドアを開けてみた優しい世界。なんだか初心に戻れたみたい。

お前は絶対変われないなんて二度と言わせない。見てろよ慎二!』

 

一方の慎二は雨に打たれたせいで風邪を引き家で寝込んでいた。

咳が止まらない。

 

「慎二、咳ひどいね大丈夫?

おかゆ無理だったらせめてこれ飲んで、大根汁のどに良いの」

 

そう言って凪が看病してくれていた過去がありありと甦るが、もういない。

あの子はもういない。

 

その事実が風邪を引いている慎二にはつらかった。

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二十一円め 21話 凪、着く

凪は生まれて初めて自分の運転で走り、己が方向音痴であることをわかった。

スナックのママにもらった紙の地図を見てアタリをつけても実際の場所と一致しない。自分がどこにいるのか、地図を見てもわからない。

 

これまで自分が人の運転に乗っかっていただけだと、色濃く実感した。

そして会社の元同僚、婚活パーティで再会した足立さんに

「お姫様かよっていう」

と言われた言葉がリフレインされて余計に恥ずかしくなってきた。

払拭するべく漕ぎ続ける。

 

ますます迷い薄暗い道に入ると、ドクロの怖い絵が描いてあるところに出た。

そこにはガラの悪そうな男の人達が座り込んで話している。恐怖を感じて迂回しようとすると…

 

パンッ

 

と音がして、自転車のタイヤがパンクした。ビンの破片を踏んだようだ。

 

やっと自転車屋さんをみつけるも、営業時間は10時から。あと2時間以上は間がある。風も冷たいので、凪は漫画喫茶に入店した。

怪我をした後に自転車のパンク、試練が続いたことで

 

『海行きを全力で潰しにかかってきているような…』

 

と不安になってしまう。思考がくすぶらないように、そして元を取るために漫画喫茶でたくさんの少女マンガを読みだす凪。

 

『いーなー少女マンガの主人公は。

問答無用でステキな誰かに愛されてて。』

 

凪は漫画を読みながら悲しくなっていた。取り柄のない普通の女の子でも漫画の中ならモテモテのヒロインになれる。そんな夢物語に、うじうじと文句が浮かんでしまう。

でも本当は気づいていた。

どの作品も、少女マンガの主人公は根は

純粋だったり、友達思いだったり、ひたむきだったり、不思議な力を持っていたりと

愛される理由が必ずあった。

 

『そうじゃなきゃ誰かに愛されることなんてありえないって、何千通りもの手法で描かれてる。

それに比べて私ときたら。

28歳で無職で。誰かに乗っかって生きることしかしてなくて。

優しくされたらすぐにべったり依存して。地に足がついてないんだ。

こんなんでキラキラにあやかろうなんて、甘い。』

 

マンガを選んでいると、いつの間にか後ろにおじさんが立っていて

 

「漫画好きなの? 良かったら僕の取ってる個室に来ない?

カップルシートにぼっちなんだ」

と声をかけられた。お酒臭いので酔っているようだ。

そんなにも自分がチョロそうに見えたのかと驚いたし、どんどん近づいてくるおじさんに震えた。

 

「凪ちゃん嫌がってるんで、やめてもらえますか?」

 

とゴンさんが助けに来てくれて「どうしてここに!?」と凪が返す…

 

まで想像した。しかしそんなことはあり得ない。

 

『私は少女マンガの主人公じゃないから。だから、自分の力で自分を守らなくちゃ』

 

「や、やみてください…っ」

なんとか口に出したが噛んでしまった。

しかし酔ったおじさんはすぐに引き下がっていった。

 

『たった一言の拒絶の言葉を言うだけで、震えすごいし汗が止まらない。

地に足をつけなくちゃ。しっかり、どっしり』

 

その後マンガ喫茶を出て自転車屋さんに行き、パンクを直してもらう。出費はイタイが、地図を見て東扇島西公園に向かう。

地下道を通るために自転車と一緒にだいぶ深く潜る。出口が見えなくて、真っ暗で、そして海の音が響いてとても怖かった。

誰ともすれ違わない暗い道。

本当にこの道で合っているのか、という不安。

 

凪は自転車で走ってみて、自分が「道を間違える」とういことに何よりも怯えていることを痛感した。

 

『なんでだろう。損したくないから?

スベってるって思われたくない? 誰に?

それこそ今は誰も見てないのに。それこそ、せっかくのお暇なのに』

 

そしてトンネルを抜けた。

やっとたどり着いた目的地の海は、思っていたよりもフツーだった。キラキラフィルター無しの海。

 

『だけど、空気はおいしい』

 

深呼吸して実感する。

 

スナックで出会った女の子たちが言っていたように、遠くに行ったところで何かが変わるなんてことは全然ない。

自分の意志で、自分の運転で目的地にたどり着けたって事実だけ。でもそれで充分だった。

 

帰り道にタイヤがパンクしたあたりで見かけたドクロの落書きの前を通りかかった。

怖いと思った落書きだったが、愛と平和を謳う文字が下に書かれていることに気が付いた。

 

そしてさっきたむろしていた怖そうな男の人達は、子供たちにスポーツドリンクを配り楽しそうに遊んでいた。

 

『道を間違えるのは怖いけど、もしかしたら間違えたり立ち止まったりしたからこそ

見えるものがあったりするのかも。なんて』

 

その後自転車を漕いで、やっと自分の家に着いた凪。

スナックで食べた鳥丼から何も食べていないことに気づく。お腹が空いたので、育ちに育った豆苗と、ツナ缶を炒めて食べた。

久々に食べる野菜が染み入るようにおいしかった。そしてカバーをかけていた、扇風機も取り出して「ただいま」と挨拶。

 

凪が旅を終えて色んな事を噛みしめているその時、

隣のゴンさんの部屋では、修羅場だった。

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二十二円め 22話 凪、露知らず②

老若男女問わず何人にも言われたセリフ

「あなたといると私はダメになる」

 

その度に「ああ、またか」って何回も何回も思った。

 

ゴンさんの部屋では、美大生のモルちゃんがゴンさんの顔に尖らせたHBのえんぴつを突き立てようとしていた。

身体全体でゴンさんを壁際に追い詰め、もう少しで芯が刺さってしまう…まで迫っている。

 

「どしたのモルちゃん、落ち着いて。

あぶないってあぶないよ、わーーーー」

 

「ゴンゴンが悪いんだゴンゴンが ゴンゴンがゴンゴンが私をダメにするから

ゴンゴンがゴンゴンのゴンゴンで」

 

モルちゃんはぶつぶつとよくわからないことを言っている。

ゴンさんは腹筋で起き上がりモルちゃんをなだめようとするが、モルちゃんが暴れたはずみで腕に鉛筆が刺さってしまった。

 

「きゃーーーー! ごっ ごめ…私カッとなって」

「あーー大丈夫ちょっと刺さっただけだから。モルちゃんの商売道具折れてないよ」

 

ゴンさんは刺された側にも関わらずいつもの調子で話している。その様子が気に入らないのか、モルちゃんはまた心を乱し始めた。

 

「なんでそんなに優しいの? それとも鉛筆で刺されかけるなんて慣れっこ?」

「何言ってるのモルちゃん」

 

確かにこれまでで一番すごかった時はチェーンソーだったが、それはここでは言わないゴンさん。

 

「無理。こんな風に他の子の影がちらつくのも、もう…」

 

モルちゃんはもらっていたゴンさんの部屋の鍵を返した。

始めは約束を破られても他の人がいても、なんてことないと思っていたらしい。2人で居る時が楽しければ良いと、凪と同じことを考えていた。

エリィはモルちゃんにも忠告していた。

用法用量を守らないといけない。依存しては終わりだと、言われていた。

 

しかしモルちゃんは次第に自分が一番したいこともおざなりになっていってしまった。

大好きだった絵も、一枚も描けなくなっていた。

 

「ゴンゴンは私にとって害悪なドラッグだったみたい。

だからもう断つの」

 

ゴンさんはそんなモルちゃんの言葉を優しく受け入れた。

 

『ああ、この子もまた壊れちゃったな。あんなに笑ってくれてたのに』

 

やつれたモルちゃんの顔を見てそう思う。

 

「じゃあ最後の思い出にぎゅってさせて?」

モルちゃんは赤くなりつつも、ゴンさんが広げた腕の中に入る。

 

「ずるい。ゴンゴンはずるいよ」

 

モルちゃんを抱きしめながら、『ずるい。ずるいのか? 俺はずるいのか』と考えていた。

 

ゴンはずるい、とは男友達からも言われたことがあった。

イベントで女の子にモテるからと、女の子たちが「エッチがくそうまい」「溶けるかと思った」と言っていたと教えてくれる。

 

「俺らにもスゴテク教えろよ!」と言われても、ゴンは

「ポテトにバニラシェイクつけて食べるとすごくうまい!」

くらいのことしか返せなかった。

 

ゴンはそんな話が出る度に愕然としていた。

『みんなこんなことするのそんなに好きなのか』

 

ゴンはセックスなんて好きじゃなかった。しなくても良いもの。一緒にして楽しい娯楽がこの世にはたくさんあるのに、どうしてコレなのか。

ゴンはただ、いつも目の前にいる子が気持ちよさそうなところを

必死で探って漁ってみつけて擦って舐めて揺すって引いて押して、全身全霊かけて。

 

奉仕に近いのでとても疲れた。

 

『でもこういうこと望んでる子が目の前にいたら老若男女問わずしてあげたいし

そんで笑って欲しい。笑って、笑っててって。ただおもてなしの延長線上』

 

最後にモルちゃんとエッチした後、ゴンはモルちゃんの残したメモを見て『さみしいなぁ』とは思ったがすぐに切り替えた。

 

友人がゴンの通り名「モーゼの海割り」という名前の由来を教えてくれる。

老若男女問わずゴンが撃ち落として横たわる屍の列が割れた海のようだから、らしい。

 

しかし結局撃ち落としたとされる老若男女は誰もゴンを選ばない。

百害あって一利なしの通過点として、一線を引かれて終わりになるだけ。

ゴンはさみしかった。

 

エリィが酔った時に「あんたがぶっ壊れてるからだよ!! 自覚しろクズ!!」と怒鳴られたことがあった。

 

ベランダの菜園のように、水をあげるだけあげて優しくしておいて実がなってはじけても枯れてもそのまま放置。

ありったけの水をもらった方はその意味を考えてしまう。その先がもっと欲しくなる。

ゴンにはそういうのがわからない、と言われた。「かわいい」「面白い」それだけで、その先が無いと。

 

ベランダに出てタバコを吸っていると、鳩がいるのが見えた。

かわいい、面白い。

だから、優しくしたい。

『それだけじゃダメなのかなぁ』

 

そんなゴンの隣の部屋では、凪とうららちゃんが楽しそうに会話していた。

 

「できた~~~!! フライパンまるごとちぎりパン!!」

「おいしそーーーー!!」

 

簡単で安くて楽しく作れるパン。具にはレーズンやチーズにごまなど7種類を入れてフンパツした。

 

「おーいーしーーいーーーー!!」

「ふわふわもっちりーーーー!!」

 

うららちゃんと一緒に、ちぎりパンをどんどんと食べ進めてしまった。

 

「えへへへへ、また凪ちゃんとこんな風に遊べて嬉しい。

103号室の人と青春するようになって忙しくて、凪ちゃんもう私とは遊んでくれないかなって思ってた。」

「ごめんね、もう大丈夫!

これからは前みたいにたくさん遊べるよ」

 

「青春終わり?」

「うん、青春終わり」

 

うららちゃんに微笑んで返した。

 

外から夕焼けチャイムが聞こえた。

ゴンは夕焼けチャイムが苦手だった。流れ出したとたんにみんなが帰ってしまう。もっと遊んでいたかったから、とても寂しく思えた。

そんな時ゴンの部屋ピンポンが鳴った。

 

「おー、凪ちゃんだ」

「すみません急に」

 

凪を部屋にあげようとするが、凪は「今日はここで」と言ってゴンの部屋の敷居を跨がなかった。

凪もゴンに鍵を返した。

 

「もう私ゴンさんと今までみたいに2人で会うのはやめようって思ってて」

 

『えーーー、そっかぁ。今日は二本立てかーー。』

 

「最初はなんてことないって思ってたんです」

と言って凪が話し出す。モルちゃんが話していたような言葉が続いた。

 

「ゴンさんは私にとって」

『害悪なドラッグ』と言われるんだろうな、とゴンは考えていた。

 

「フライパンいっぱいに焼いたちぎりパンみたいな人なんだって!」

しかし凪は目をキラキラさせて思いがけない言葉を続けた。

 

「え?」

「あっ す、すみません唐突すぎましたよね!」

 

と言って凪はうららちゃんと作ったちぎりパンをおすそ分けしてくれた。

 

「色んな具が入ってるんです。私にとってゴンさんって本当にこのパンみたいで

かじる度にわくわくして、次はどんな味で楽しませてくれるんだろうって次々食べたくなって…

これ以上食べたら太っちゃうのにやめられなくて、でもたくさん食べたいから正当っぽい理由並べて食べて、

ずっと食べることしか考えられなくなって。

今の私にとってゴンさんはあまりにもおいしすぎるんです」

 

ゴンはピンとこなかった。

 

「バッサリ切る必要ある? おいしいパンなら食べたいときに食べればいいじゃない。

凪ちゃん全然太ってないよ」

 

凪は照れながら別の例えを探し出した。

 

「私がゴンさんのような成人男性で、しかもすごく欲求不満だとします。

そんな私にとってゴンさんは葉円でやたら魅力的な女子中学生みたいな存在なんです!!

しかも隣に住んでておいしいちぎりパン片手にいつでも食べていいよって囁いてくるんです!!

そのくらい禁忌です!!!」

 

凪は力説した。

「凪ちゃんにとって俺、女子中学生なの!? ヒゲ生えてるのに!?」

「セーラー服に生足むっちり太ももです!!」

 

「それは絶対食べちゃダメだ凪ちゃん。お縄だし、身を滅ぼすよ。」

 

やっとゴンも理解できた。凪の肩をがっちり握って答える。

 

「やっとわかっていただけましたか…!

と、いうわけで、前のようにいち隣人としてよろしくお願いします」

「うん、わかった。俺、女子中学生なんだもんね」

 

ヤオアニのタイムセールに向かおうとする凪にそっと耳打ちするゴン。

「あ、でもさ、凪ちゃん。

食べたくなったらいつでも言ってね」

 

「だからもう! そういうのもナシです!!」

 

凪は赤くなって出て行った。それを見送る。

凪がくれたちぎりパンを食べながら、凪のことを考える。

 

『凪ちゃんって本当に面白いな。

放置したままはじけてた赤い実のゴーヤをラッキーゴーヤだって教えてくれたのも凪ちゃんだった。

凪ちゃんは壊れないのかもしれない。だとしたら俺、凪ちゃんの通過点にはなりたくないなぁ』

 

ゴンは、胸にトッという動きを感じた。

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二十三円め 23話 凪、友を諭す

坂本龍子(さかもと りょうこ) 28歳。

凪が職安で出会った凪と同じような状況で、同い年の友達。

龍子の朝はビタミンスムージーを飲み、ニュースをチェック。そしてメールチェック。

メールは面接不採用の通知でびっしりだった。

坂本龍子は求職中の身だった。そこから流れるようにSNSを開き、第一線で活躍している同級生たちの近況報告を眺めた。

龍子は彼らを見て力がみなぎってくるような気がしていた。

今日も前向きに家を出る。

そして友達の凪に会う。

 

その日は合同企業説明会。一つのホールにたくさんの企業が集まる就活応援イベント。

各ブースで企業の仕事無いようについて深く質問で着たり、自分を売り込んだりもできる。

 

坂本龍子はぐいぐいぐいぐいと自分を前に押し出していた。

席に着いてすぐに「坂本です!!」と言ってその後すぐに「御社の給与体系を~」と続く。

 

相手の表情を見て、自分の熱意がうわ滑って空回りしているのを感じていた。

チェーンがかみ合っていないのに必死に漕いでるような。とにかく前に、前に前に…

 

『だって漕ぐのをやめたら、私…』

 

そんな時、「もしかして龍子?」とかつての先輩に声をかけられた。

どうやら先輩の会社も企業ブースに参加しているようだった。

 

「良かったらうちの会社に面接来る?

今日は人いすぎだから後日。後輩のよしみで社長に直に会わせてやるよ。

龍子みたいな奴、うちの社長気に入ると思う」

 

そう言われて「是非!」と力強く返事をした。

龍子を誘ってくれた先輩は大学では憧れの先輩だったらしい。

龍子は東大(電車の音で聞こえないことになってるけどたぶん合ってる)出身だった。

面接には凪も一緒に来てもかまわないと言っていた先輩。龍子は夢のようだと思っていた。

 

そして面接当日。

大きなビル。会社に入ると活気のあるオフィスで、社員同士みんな仲も良さそうだった。面接に来た龍子たちのことを歓迎してくれているようだった。

 

そして社長さんとの面接。

きちんと感がすごくて、高そうなスーツを着ていた。

 

さわやかで紳士的な社長。とても優しそうだった。

しかしなにか違和感を感じる。しかし龍子は気にしないことにした。

『前向きに前向きに』

 

面接が終わり、凪とファミレスでおしゃべり。

 

「素敵な会社でしたね! あの会社に勤めたら人として成長できそう!」

龍子の楽しそうにする話を、凪は真逆の顔で聞いていた。

 

「坂本さん。私はあの会社やめた方が良いと思います。」

「ど…どうしてですか?」

 

「坂本さん本当は気づいてますよね?」

 

あのビルは怪しそうなテナントばかり入っていた。闇金のようなところや、いかがわしいところばかり入っていた。

そしてオフィスには監視カメラがびっしり。

よく見れば社員の人たちはみんな目が死んでいたし、デスクは栄養ドリンクだらけだった。

業務内容もはぐらかされて不透明。龍子の先輩のお茶を出す手も震えていた、と凪は言う。

 

「それにあの社長、前歯が無かったですよね」

 

龍子はテーブルをダンッと叩いた。

「だから何だって言うんですか!? 前歯が無いからダメな社長ってことですか!?

歯が欲しくても歯が無い人の気持ち考えたことあるんですか!?」

と龍子は別の角度で怒り出す。

 

「私が言いたいのは、社長が言ってたことがおかしいってはなしです。

会社を背負ってる身として自分を鼓舞してるって言うなら、まず歯じゃない!? って話です!!」

 

「そうやって大島さんはアラ探しばっかり。後ろ向きすぎます!!

なんか逆に燃えてきました。私あの会社に決めようかな。社長も先輩もすぐ来いって言ってくれてたし。

今すぐ返信します!」

 

『そうよ、前へ。私は前向きじゃなくちゃ』

 

「坂本さん! あなたのそういう常に前向きなところステキだと思います。

けど、たまには後ろも振り向かなくちゃ自分がどこにいるのかわからなくなっちゃいませんか」

 

 

坂本龍子は凪と初めて会った時から、凪のことを

『なんて頭の悪い人だろう』

と思っていた。

 

『そんな風に実直に向き合わなくていいのに』

『そんな真摯に本当のことを言う必要ないのに』

「こんな私にそんな効率の悪いことしなくていいのに』

 

先輩の会社がやばそうなことは、もらった名刺から社名を検索してすぐに分かった。

ブースに居た人もサクラだろうと思ったが、認めたくなかった。

 

龍子は小さい頃に「神童」なんて呼ばれていた。

ありとあらゆる教科が難なく頭に入り、一番頭の良い人が行くとされる大学にも入学した。

しかし大学3年ごろの夏、就活が始まったあたりで気づいた。

 

インターン先でのアプローチ、グループディスカッションでの発言力、情報収集、面接官への気の利いたアドリブ…

全て朦朧で惨敗した。

 

龍子は「地頭(じあたま)」が良くなかった。

周りが大企業に就職していく中、321志望くらいの会社にやっと就職した。

 

しかし失敗するたびに「これだから高学歴は使えない」と言われ続けた。

職を転々としても言われ続け、嫌になったころに石に出会った。

 

『前向きに、とにかく前向きに。後ろ向きな感情なんて悪。

もしもあの時、なんてifを思うことが畏怖。そんな効率の悪いことしていたら』

 

「自分がみじめで見てられない」

龍子は泣き出していた。

 

「坂本さん、原罪お暇中で、とにかく時間だけはあります。

話を聞くことならいくらでも」

 

『後ろ向きな感情は悪。でも後悔ばかりの、あの時があったから私はこの人に出会えたんだ。

何度も手を差し伸べてくれるこの人に』

 

龍子はどんどんと注文しだす。

長丁場になりそうなので腹ごしらえをしたいらしい。

 

「もちろん私がごちそうします! ちょっと駅前のATMに行ってきますね」

というが駅前まではとても遠い。凪は自分の自転車の鍵を龍子に貸した。

 

『口に出すのもはばかられる、怨念みたいな後ろ向きな話も大島さんなら困り顔で受け止めてくれるんだろう。

もしかして後ろ向きな自分を前向きに受け入れることができたら、それこそ前に…』

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二十四円め 24話 凪、鬼と呼ばれる

余談だが、セックスの時慎二は上に乗ってめちゃくちゃに動かれるのが好きだった。

さらさらストレートな髪が揺れるのも視覚的に良かったし

いつもは大人しい引っ込み思案の「そいつ」の目が乱れた髪から覗いて、潤んで熱くなっているのもすごく良かった。

 

『なんつーかとにかく諸々すげーいい』

 

 

と、いう夢を見ていて慎二は飛び起きた。

 

『ひょっとして、俺が気づいていなかっただけで俺は童貞だったのか?』

 

朝から元カノの凪の夢を見て嫌な気分だった。

慎二の好みだった控えめな性格とストレートロングの髪の毛は、今では見る影もない。

今ではボロアパートの隣人の天然ゆる男にあえなく闇落ちしていた。

 

『ざまぁねぇやバカ女。

あいつあの男と間違いなくヤったんだよな。

マジで笑える。あのクソベスト級のビッチ』

 

電車が渋谷に着いたので、慎二は電車を降りた。

慎二の前の席に座っていた子供が、母親に話しかける。

 

「ねぇママ、あのお兄ちゃんすごい顔で泣いてたよ。

お腹でも痛かったのかなぁ?」

 

元カノ凪の「呪い」にさいなまれていた慎二だが、仕事は絶好調だった。

契約をどんどんと取っていく。同僚や後輩からは「人間じゃない」とまで言われた。

 

『ロジカル・コミカル・クラシカル・ラジカル・若干のシニカル

片っ端から引き出し開けて、あとはルールとツールに乗っ取ってセール』

 

大抵のケースはありものの引き出しで対応できた。

 

『俺があいつの呪いにかかり続けているのは

変わってくあいつをどこの引き出しにぶち込んだらいいか

わからないからってだけだ。

なら対処法は1つ。とにかくもう会わなければいい!

そしたら呪いは風化して腐っていくのみ! 勝手に朽ちてけくそビッチ!!』

 

 

凪の通帳にはやっと失業保険が入っていた。心許なかった残高に若干の潤い。

お金がもたらす心のゆとりに感動し、何か新しいことを始めようと決意する!

 

…が、凪の携帯に着信が入った。

 

「もしもし凪ーーーー? お母さんでーーす!」

 

このタイミングでテンションが地に落ちる母親からの電話。何を言われるのかビクビクしたが、なぜだか機嫌がいいようだった。

母は留守番を祖母に任せてドレスを選びに出かけているらしい。

年明けに東京で行われる結婚式に着ていくドレス選びの最中のようだった。

 

母との会話で改めて、「お母さんが東京にやってくるんだった」ということを思い出す。

その対策を少しも取れていなかったことを後悔する。

 

母の電話の本題は、ずっと家で漬けていたぬか床についてだった。

凪の祖母、おばあちゃんがずっと漬けていたがもう歳を取ったということで畳むことにしたのだと言う。

おばあちゃんは長年続けてきたので渋ったが

「分けたぬか床は凪が継いでくれるから大丈夫よ」

と言っておばあちゃんを説得したらしい。

 

「楽しみだわー東京で浸かったおばあちゃんと凪のぬか漬けコラボ。

そろそろ会計しなくちゃ! 切るわねー」

 

母との電話が終わり、すぐにぬかを探す凪。

引っ越しの時に段ボールに詰めてそのままだった。新生活の忙しさと楽しさで放置していたことを思い出した。

ぬかは、ものすごい状態になっていた。

タッパーに入っていたぬかを、元々入っていた段ボールにもう一度密閉しガムテープで封印する。

 

『おばあちゃんのぬか床のあの独特な滋味(じみ)は唯一無二!!

即席でこしらえたぬか床じゃお母さんに絶対バレる!! 一生あてこすられてネチネチののしられる!

もうおしまいだぁぁ…』

 

と思ったが、はっと思い出す。

 

『もしかしてあそこになら!!

ああーーー! でもそれはあまりにも! いやでも背に腹は代えられない…でも!!』

 

 

一方の慎二は広報部の接待に駆り出されていた。

得意先のスマホのロック画面をチラ、と見た時にマンホールの画像だったことから話を振り

先方がご当地マンホールフェチなことがわかった。

先方は趣味の話ができて、とても上機嫌で参加している女の子たちもテンションがいつもと違うらしい。

 

トイレで広報部の内海さんが何か薬を飲む。

「どっか悪いんすか?」

と聞くと、腰痛の薬だと教えてくれた。

 

「安価なジェネリック医薬品に替えたら効きが悪い気がしてさ。

まぁ思い込みなんだろうけど」

 

「そっすねー。ジェネリックって新薬と効能はほぼ変わらないって統計出てるみたいですし。

『これじゃなきゃダメだ』って思いこみの呪いが早くとけるといいすねー」

 

「あはは、呪いとか怖いな。」

内海さんは薬を飲んで、先に戻って行った。

 

その後接待先の女性が「やだ、間違えちゃった。こっち男性トイレ?」と言って入ってきた。

「ってうっそー! 我聞くん戻ってこないんだもん。お話したくてぬけてきちゃった♡」

 

女の子は慎二に抱き着く。

 

内海さんから「下座に座っている子は手出すのNGな。先方のお気に入りだから」と言われていた。

女の子をじっと見て、

『下座に座ってる子、じゃない』

と確認する。

 

そのまま2人はトイレの個室に入り、女の子は慎二にフェラをする。

 

『あー結構うまい。

思い込みの呪いなんてクソくらえ。

手頃なとこで気持ちいいことしてればすぐ忘れる。

それに俺、してくれる子のあたまをこうやって上から撫でるのも好き。さらさらすとーんって』

 

女の子の頭をなでていたが、いつの間にか凪の頭をなでているように錯覚した。

後ろに下がりすぎて、背中と頭をぶつける。

「続きはまた今度」と言ってその場はすぐに解散した。

 

帰り道。

『ありえね~~~っっ

とうとう手触りまで感じたぞ!?

あのごわっとしてもじゃっとした不快な手触り! なんだこれただただ恐怖でしかない!!』

 

「慎二! 良かった帰ってきた!

 

慎二の前に、凪が現れた。

慎二は心の中で、この呪いの名前について考えていた。

 

慎二の部屋に着くと、凪は100均のつっぱり棒を玄関のドアに取り付け閉められないように対策。

そして慎二の家の冷蔵庫に残っていた小分けの小分けのぬか床を手に入れて、慎二に事情を説明しながらお礼を伝える。

 

「これおばあちゃんの代から続くぬか床でうっかりダメにしちゃった残党なんだけど、

ってごめんこんな話どうでもいいよね。

でもとにかく、捨てないでくれててありがとう!!」

 

目に少し涙をためて笑顔でお礼を言った凪。

 

『かっ

かわっ

いや!! 否!!』

 

心の声を必死に否定する。

「おっ…お前!

俺がどんだけ毎日必死に…それをこんな!

悪魔か!? いや違うな鬼だな鬼!!

鬼って大抵ボサ髪の天パだしな! もう来んなブス鬼!!」

 

と言って凪を部屋の外に押し出す。

ドアの向こうからもう一度

「あ…あのほんとうにありが」

とお礼を言うが

 

「どういたしましてえ!!」

と適当に返答した。

 

凪は慎二が『疲れてるのかな』思い、そのままぬか床を持って帰宅した。

 

慎二は部屋で布団にくるまってなんとか寝ようとしていた。

 

『あのクソ女ありえねーーーー

寝る! 寝て忘れる!!

でも、前に会った時より顔色良くなってたな。もしかして隣の奴と炎が切れたのか?

 

って俺には関係ないし、はい寝る! 超寝る!!』

 

 

その夜慎二が見た夢は、鬼の姿をした凪が花畑でぬか床タッパーとつっぱり棒を片手に踊っている夢だった。

 

そんな夢が連日続くと、さすがに絶望した。

 

『もしかして一生呪われ続けるのか?

この俺があんなスベり倒したモジャモジャ女に』

 

ジェネリック医薬品は何となく効かない、と考えていた内海さんは思い切っていつもと違う病院に行き

いつもと全く違う薬を処方されて飲んでみたらすごくよく効いて顔色も良くなったらしい。

 

慎二は上司から、大阪から異動になり急遽慎二の部で働くことになった市川円(いちかわ まどか)さんを紹介された。

 

『顔が圧倒的にかわいい』

 

円さんは慎二好みのまっすぐストレートヘアだった。

 

凪のぬか床は無事に蘇生完了した。

番外編1、2、3

番外編1は黄色の扇風機くん目線から見たゴンさんのお話。

確かに凪ちゃんの周りってろくな男がいない…w

 

番外編2はうららちゃんと一緒に遊んでいる話。

うららちゃんかわいい。一緒に楽しそうにアイス食べているのがかわいい。

 

番外編3。

OLの時の凪のかんたんストレッチ。これは確かに効く!!

ストレッチしてる時の顔を慎二に見られて恥ずかしい…って話なんだけど、凪ちゃん目線と慎二目線だと優し……くはあるんだよな。

言い方が誤解されてるだけで。

 

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凪のお暇 4巻 感想

おかえり平和。こんにちは新しい恋?

そんな感じの4巻だった。慎二と凪の関係は進んだような…何も変わっていないような…感じだけど、ゴンさんとの関係は良い感じに終結してよかった。

凪が自分がどれだけダメな方向を向いていたのか認識できたのが良かった。エリィちゃんがそうだったように、倒れた屍を見て自分の状態を認識したのかな。

ゴンさんがどう思っていたのかも描かれていたけど…確かにゴンさんからしたらそうなのか。セックスなんて楽しいものでも無いけど、求められている気がするからしてしまうのか。ある意味ゴンさんも空気を読むのがとても上手い、ということなのかな。

だからこそ相手が壊れるのがわからない。かわいい・面白いも本心から言っているからこそ、それによって相手が壊れてしまうのが理解できないんだろう。

モルちゃんがゴンさんを脅しにかかるのはびっくりしたけども。壁の向こうですごいこと起きてたんだなw

でもそれにも勝るのがゴンさんの経験だわw チェーンソーを持ち出されたこともあるなんて、そうそう無いよw 洋画でもあるかどうか怪しいくらいだわw

ゴンさんからしたら…みんなに優しくしていたらいつの間にか壊れてしまって、そして関係が終わってしまうんだね。セックスに対して特に特別感も無いからこそ、好きでもないんだろうな。

だからこそ凪ちゃんが正気を取り戻し、そしてゴンさんのことを「害悪ドラッグ」とか言わなかったのは際立つだろうなぁ~~!

 

もちろん凪ちゃんが正気を取り戻すまでも大変だったけども。慎二と雨の中ケンカして、うららちゃんとうららちゃんのお母さんと話して。

そして自転車を買って自分で漕いで海まで行って、途中道に迷ったりしてスナックに寄って道を聞いたり自分の話をしたり他の人の話を聞いたり。

凪ちゃんはこれまで「知った振り」をして話に参加していることが多かった…のかな。自分で動く必要性も意味も感じてないけど、聞いただけ・見ただけで満足してしまっていた。だからこそ初めて経験したときの衝撃が大きすぎて「初めて」をくれた人に大きく依存してしまう。

自分の意志で「どこかに行きたい」とか思ったことないなんて怖いわw 根っからの依存体質を感じるw

そんな凪ちゃんが自分の意志で海まで自転車漕いで行ったのは偉い。道に迷ったり怖い思いをしたり、パンクしたりしたけどそれがあったからこそゴンさんとの生活で失ったキラキラを取り戻すことができた。

そしてあのメンヘラ期間をゴンさんの人間性のせいにせずに「ゴンさんという人間が魅力的すぎて摂取し過ぎてしまう」という超前向きな理由を本人に伝えるところに人間性の良さが出ている。

凪ちゃん自身をおじさんに例え、そしてゴンさんを女子中学生に見立てるのは面白いわw あれを聞いたらゴンさんのように「やめようw」と言わざるを得ないw

平和な世界が戻って、うららちゃんと遊ぶようにもなったのが嬉しい。まだお母さんのこととか問題はあるけど、メンヘラから回復したのは本当に偉い!!

 

ゴンさんが凪ちゃんに…恋…のようなものをしたのは、今までにない存在だからってのもあるんだろな。今までの人はゴンさんに「与えられるのを待つ」という人だった。

待っているからゴンさんが与え続けると「あなたといるとダメになる」と言われて、ゴンさんが悪いかのように言われてしまう。それが嫌だった。

でも凪ちゃんはゴンさん自身を否定することも無ければ、凪ちゃん自身を否定もしない。ゴンさんにとって新しいタイプの人間、とも言えるのかな。

これは展開が楽しみになってまいりました!!w

慎二にかけられた呪い

こいつは素直な気持ちを言えないようになっている呪いでもかけられているのかってくらいにすぐ「ブス」とか言うなぁ~~~!

慎二は凪ちゃんのことすっごい好きだし、今でもずっと引きずってるのに。というかずっと凪だけを大切にしたいとか、ずっと見てたとか、今までのこと全部正直に話せば良いのに凪ちゃんの前でかっこつけるというか、今まで見せたことのない姿を見せないようにしているから話がこじれるんだよね。

凪ちゃんの前ではいつもかっこいい自分でいたいってのがあるかもしれないけど…それにしたってかっこつけすぎというか引っ張られすぎだろうw

「俺は本当は童貞だったのか?」

ってのは笑ったw もうだいぶこじらせている!! 慎二だいぶこじらせてるよ!!

早く凪ちゃんに今までのこと謝って盛大にフラれるとか、思っていたこと全部打ち明けるとかすればよかったのに。本心と言っていることが真逆すぎて慎二がヒロインのようにも思えてくるわw

ラストで髪がストレートの新しい子が登場したけど…あの子を狙いだすんだろうか。あの子には既に付き合っている人とかもいそうなものだけど…どうなんだ!?

前のめりすぎる坂本さん

坂本さんは勉強頑張りすぎて人間関係はちゃんと経験積んでこなかったタイプなのかなー…。

色んな会社が集まる会場で真っ先に「坂本です! 私の強みは」から始まる会話っておかしいでしょ。アメリカだとしてもおかしいよ。おかしいと気づいてくれよ。

坂本さんはそれがすごいアピールだと思っているけど、マイナスのアピールでしかないよね。だって相手の話を全然聞けてないし、相手の反応を見て話を変えることもできないんだもの。

大学の先輩に紹介されて入ろうとした会社もブラック企業っぽいし、社長に前歯が無いっておかしいでしょ!!w 会社の代表なんだからどうにかして歯くらい入れてくれよ!!w

それをする余裕もないくらいの会社ってことだし、凪ちゃんの説明を見ても行かない方が良い会社ってことに間違いはない。

坂本さんは色々と焦りすぎるし、過去を振り返らなさすぎるし、変に人の話を聞き入れなさすぎるところがある。まずは落ち着いて欲しい。

凪ちゃんという友達ができて良かった。これまでのことを全部、ではないにしろ色々と話して地に足をつけて生きて欲しいわ。

ま、これはあたし自身にも言えることなんだけどね!!!!

迫りくるお母さん問題

凪ちゃんのお母さんって今のところ害悪でしか無いけど、会った時に色々と言いたいこと言えるようになるんだろうか。

もうとっくに成人しているんだから、お母さんが何と言おうが北海道に帰らないで東京に居てもいいはずなんだけど凪ちゃんはそれに気づいているのかいないのか…w

ぬか床のために慎二の家に行くなんて、凪ちゃんも身体を張るもんだわw 慎二としてはめちゃくちゃ嬉しかったはずだけど、それを表に出さないところがさすがの慎二。

もっとかわいいとか、言えばいいのに。言えばもっと何か変わるかもしれないのに。慎二が一番変わることを恐れているのかもしれない。

お母さん問題の時に慎二くらいはっきり言ってくれる人がいれば心強いけど、それは凪ちゃん自身が言わないとどうしようも無いことだから…なぁーー。

5巻はどうなるんだろうか。4巻もするっと読めてしまった。面白いぜ!! 楽しい!!

段々慎二がかわいく思えてきた

1巻読んだあたりでは絶対に思わなかったけど、4巻まで読んでネタバレも書いてる……

段々慎二がかわいくも思えてきた。

慎二は口が悪いだけ…なの……かな。本心をはっきりと人に見せたりしない性格なのかもしれない。それを隠すためにも空気を読んでいるところがあるんだろうけど、素でいたことが無さ過ぎて素のままだと相手によっては傷ついてしまうのかも。

番外編3を読み返してすごく思ったけど…ちゃんと凪ちゃんのこと考えてはいるんだよね。

考えてはいる。それが凪ちゃんには全く伝わってないだけで。

凪ちゃんは温室育ちというか…性格もあるだろうけど、口汚い言葉とかに触れてこなかっただろうし、ケンカもほぼしてこなかっただろうし…だからこそ慎二の素の言葉に傷つく……のかなぁ…。

でも慎二が全く悪くない、とも言えないんだけどね!!!

しかし凪ちゃんは全く悪くない…とも言い切れないからなーー。難しい問題だ。

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