
鈴林です。
「部長が堕ちる漫画」で知った中村朝さんという人の短編集を買ってみた。
電子で買おうと思ったけど、電子版は発売してなかった。そんなことあるのか…。
電子でしか発売しない、はあっても紙だけというのもあるんだなとしみじみする。
紙の漫画を久々に買った。
短編だけど、連載したら面白そうだな…というのもあって楽しい。
怖い感じで終わるのもあるし、楽しい感じ・悲しいのがちょっとある感じで終わったりもする。
天帝少年 中村朝短編集
きみが小説家をみつけたら
紙の本でしか売ってなかったから、久々に紙で買ったけど紙の匂いって良いな。
この話はゴーストライターの工藤道春さんと、あの物語の中の少年はちょっとリンクしてた…という話だったんだろうか。
ゴーストライターさんは元々有名小説家の代わりとして書いていたわけだけど、名声は全部神丘元也のものになってしまう。
少年と受け取り方が違うだけで、あの泥棒さんがいなかったら結末は少年と同じになっていたのかもしれない。
あの泥棒さんがたまたまゴーストライターさんの家に盗みに入って、そしてあの小説を読んでくれていなければ起こらなかったこと。
ドラマチックだし読んでいて面白かった。
あの窓から外を覗いている少年の家は、丘の上とかにあったのかな? どうしても見づらい場所とか出てきそうだけど…それでも人の生活を盗み見るって楽しいよね。
あたしも外歩いてる時に、カーテン開いてる部屋を見るの大好きだからわかるわ~w
「きみが小説家をみつけたら」世界は変わる、とかそんな風につながるタイトルなのかしら。
うまいこと言えないけど、泥棒さんも小説家さんを盗んだ後はちゃんと普通に働いてて、
推しの小説家を勧めることまでしているのがかわいい。
何事も「誰か1人でも自分を応援してくれる人がいる」というのは力になるものなんだと感じる。
白件
これは「しろくだん」と読むので良いんだよね。
初めて読んだのは確かピクシブ…だった気がする。
初めて読んだときは怖かったというか「どうなるんだろう」という気持ちの方が強かった。
ハッピーエンドが好きだから、そんな風になってほしかったけど…そうならなかったなぁ。
始めに殺された4人の男子高校生は朋山(ほうやま)出身だったんだろうか。だから殺されてしまったのかな?
もしそうなら4人の子がいるはずだけど…いないのかしら??
オカイコ様はどうして朋山に居ついてしまったんだろう。
そしてどうして朋山の男ばかりを狙うのだろうか。
朋山の男と子を為していけば、いずれ朋山出身の男がいなくなるのはわかっていたはずだ。
「生物」の本能として子孫を残したい気持ちはわかるけど、子を作るために男を殺し続けていくのは効率が悪い気がする。
それほどに歪な存在なのかな。
田島くんはオカイコ様に殺されるのではなく、事故死だったことにも理由がありそうだけど…わかんないな。
朋山から、オカイコ様から逃げたから子供を作る価値なし、みたいになってしまった…とか?
国見の先輩の田島さんがオカイコ様に取り殺されてしまうのが残念だった。
田島さんにとって自分の生き死によりも「とりあえず子供を産んでくれる」ことの方が魅力的に映ってしまったのだろうか。
トウテツの子
これが一番好き。
話の終わり方も好き。
途中の「彼は最終処分場に行くんだよ」がハっとしたというか、ショックだったのが印象的。
加瀬野原くんにとって、「トウテツの子」である部長というよりも「お茶を淹れるのがものすごく下手な部長」という風に見えていたんだよね。
だから口輪をしている部長に対して「こんなん外しちまえよ」と言える。
周りの人は部長を「トウテツ」と呼び、人間扱いを全くしない。
ふざけてトウテツの口に手を入れて中指を途中まで失ったのは、その人のせいなのに部長のせいにされたんだろうな。
なんか…本当に話の展開とかが好き。
「この世界が神様に見捨てられたんだ」というセリフも好き。
トウテツの子を利用して、核廃棄物を失くしてやろうとしていた人間に対し同じ人間が反旗を翻した。
人が神を利用して利益を得ようとしすぎてしまったがために、世界が見捨てられた。
お父さんの元に行った方が幸せに暮らせるのかもしれない。
半妖の夜叉姫だとトウテツってめちゃくちゃ不細工な感じだったけど、この話の部長はすごいかっこいい。
これ好き。
三弦巻き
この話も好き。
味がわからない、という人も実際いるのかもしれない。
手足がない状態で生まれる人だっているんだし。
痛みや体に異常があるかどうかを確かめるもの、と聞いたことがあるけど味もそうなんだね。
体に必要な成分が入っていればよりおいしく感じるし、食を楽しむことで生きることを楽しむことにも繋がる。
人間の三大欲求だから間違ってない。
でも三弦はその「味」を楽しむことができない。
そして周りはそんな三弦のことを信じられない。
「味がわからないなんて本当なの?」とからかったりするから、いたずらをするんだろう。
普通ならすぐわかるようないたずらでも、三弦にはわかりえない。
中に何が入っているのか味を見て確認することができない。見て触って、確認するしかない。
味は見えない。数値化できることだけど、日々の食事でそんなこともできない。
給食での「ペンキで作ったナポリタン」ラーメン屋での「酢の入った水」。
それまでの人生で「他人の作った料理は信用できない」と確信を得るほどに、三弦は他の人の料理が怖くて食べられなくなってしまったんだな。
人が道に落ちている物を食べようとしないように、トイレの床に落ちてしまった食べ物を食べようとしないように
三弦は人が作ったものを食べられない。
だけど最後に新太が教えてくれた手巻き寿司の「三弦巻き」は嬉しそうなのがまた泣ける。
いつもは「自分が料理を作る側」で、「作ってもらう側」には立てなかった。
でも新太には「作ってもらえた」。
誰かといることで知らない世界が開けた。もうそこが尊い。好き。
流行り神プロトコル
これ良い話だった…。
阿智くんと座敷童の関わり…かと思いきや、座敷童じゃなくて悪霊だった…
かと思ったら、自称座敷童は阿智くんの妹さんだったんだもんな…。
お母さんに引き取られてすぐ死んでしまって、テレビで見た座敷童の特集で自分を座敷童だと思って住む人を幸せにしようとし始めた。
さちちゃんは「幸せにしよう」とするのに、阿智くんは罪を償おうと不幸になろうとしているのが悲しい。
さちちゃんは幽霊だけど、考え方がとてもやさしい。
阿智くんの「俺は不幸になりたいんだ」という願いを叶えずに、成仏してくれた。
薄い感想しか書けないけど、細かいこと書くよりもただ読んだ時の気持ちを大事にしたい感じ。
さちちゃんは次どこに生まれるんだろう。
阿智くんもさちちゃんも幸せに生きてくれ。
天帝少年
面白かった!
流行りの「異世界転生もの」に近いかと思いきやそうでもない、という話。
大友にとっての日常とロッカにとっての日常は違う。
お互いの持つ日常は、ありきたりのものでどうなるか予想のつきやすいもので、このまま続けることに本当に意味があるのか疑問な日常だった。
でもロッカが文明保護区に落ちてきたことで、お互いの世界が変わった。
生きる意味を感じていなかった大友と、生きることに理由なんて必要なのかと思っていたロッカ出会って見方が変わる。
「俺がお前の生きる理由になるよ」
「俺がお前の生きる意味になろう」
ってセリフ良いなーーーー!
難しい部分もあるんだけど、はっきりわからなくてもすごく…良い。
なんかいい。全くうまく言えないけど!w
もうロッカと大友は出会うことは無いかもしれないけど、お互いにお互いのことをずっと意識しながら生きていくんだと思う。